チェコから来たインターン生が日本で感じた文化の違い

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チェコと日本の文化の違い…とひとことで言ってもいろいろなものがありますよね。食文化、芸術文化、言葉、しぐさ…。チェコに行ったことのある方なら、「これは日本と似てる!」「これは日本と全然違う!」という違いを感じたはず。
今回は、チェコセンター東京で3ヵ月間インターンをしてくれたDavid Grantさんに、滞在中に感じたチェコと日本の文化の違いについてエッセイを書いてもらいました!

日本で感じた文化の違い

昨年9月から12月まで、チェコセンター東京でインターンシップ実習をしていました。チェコセンター東京は、在日チェコ共和国大使館内にある文化機関であり、チェコ語が話せる日本人と、日本語が話せるチェコ人がいますので、そのおかげで、両国の文化がほぼ毎日接しているのを体験する事ができました。わたし自身も日本語を勉強しているチェコ人ですので、様々な場面では、すごく興味深い体験になりました。

当然ですが、海外で暮らすと、私たちが慣れている世界、人の行動、物や問題などの扱い方、つまり文化が随分違います。それは世界共通の現象なはずです。海外で幸せな生活を送るため、その文化のルール、習慣等を認めなければ難しいかもしれません。日本語は「郷に入っては郷に従え」という素晴らしい諺があります。それは、「土地によって風俗や習慣、つまり文化が違うので、新しく来た人はその土地にいる間、その土地の文化に従うべきだ」というような意味なのです。この諺は日本の文化にそっくり合っていると思います。なぜかというと、人の自我だけではなく、人の周りの文脈、人の環境を意識しているからです。

わたし自身はとてもいい諺だと思いますが、やはり文化が違う外国人として、実際にこの知恵を守りにくい場合もありました。例えば、実習をしていたある日、アルバイトの面接が行われていました。その時、面接を行っていたチェコセンターの女性スタッフと男子学生に、コーヒーを二つ淹れて持って行きました。最初に女性スタッフ、その後男子学生にコーヒーを出し、事務室に戻りました。問題がないように思いましたが、後ほど「飲み物などを出す時に、一番最初にはお客さん、その後にチェコセンターのスタッフです。」と優しく注意をされました。よく考えれば、日本は確かにそうですよね、と自分でも思ったんですが、自分の行動を振り返ってみたら、やはりチェコでは「内と外(チェコセンターとそのお客さん)」という分け方のほうが弱く、「女性、年齢、上下関係」のほうが敬意を表すべきだと考えることが多く、つまり、少しだけ“紳士の文化”がチェコでは強いかもしれないと思いました。

それは、「わたしは紳士です」、「日本は紳士の文化が全くない」と言いたいのではなく、わたしが育てられてきた文化はそのように設定されており、そのように行動するのが正しく感じるかもしれないと思っただけです。この経験のおかげで気づいたのは、自分で自分の価値観によって、自分が思っている「“正しい“」行動をしても、結果的には失礼になる恐れがあるということです。今説明してみた体験は、あまりにも考えるべきではない、当然の話なのかもしれませんが、わたしにとっては面白かったです。仕事の日常的な活動の中でも、いい意志を持っても、一番簡単な仕事でも失敗をしたことは、わたしを考えさせたのです。それは、どこからどこまではチェコ文化?、どこからどこまでは日本文化?、どこからどこまでは私?、というような考えでした。もちろん、海外の「どこ」と「だれ」などというのは重要だと思いますので、日本で生活するだけで日本人にならなければならないというわけではないと思います。ただ、どこかで生活することにするときに、その環境を深く考えなければならないというように思いました。

コーヒーの体験のおかげで確認できたのは、文化は大きいことだけで表されているわけではなく、一番細かい日常的な生活の中で表されているということです。それを理論的に理解していても、そのような体験がなければ、実際に理解していないと思うようになりました。コーヒーの体験があったのをありがたく思います。また日本の美しい“郷”にいつか行きたいと思っております。

 

 

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この記事を書いた人

チェコセンター東京

チェコセンターは世界3大陸26都市においてチェコ文化の普及につとめているチェコ外務省の外郭団体です。2006年10月にアジアで第1号のチェコセンターとして、駐日チェコ共和国大使館内にチェコセンター東京支局がオープンしました。

以来、絵画、写真、ガラス工芸、デザインなどの作品の展示や、映画上映会、文学、音楽、経済などのイベントを開催しチェコ文化を紹介するほか、チェコ語教室も開講しています。また、その他のチェコ文化関連イベントへの助言、協力も行っています。

イベント情報はニュースレターでも配信していますので、チェコ文化にご興味のある方はぜひウェブサイトからご登録ください。お待ちしております!

担当カテゴリ:文化と歴史を学ぶ