プラハ外の美術館やギャラリーを訪れる

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チェコ旅行をお考えの皆さま、おそらくプラハ以外にも行かれることが多いと思います。 

例えばプラハからすぐ、骸骨の教会で有名な歴史的な街”クトナーホラ”、山の上のテレビ塔がシンボリックな”リベレツ”、かわいい街で有名な”チェスキークルムロフ”、チェコ第二の都市”ブルノ”。 

それらの都市にも良い展示をする、美しい建築も注目の美術館があります。(もちろんその他の都市にもたくさん!)今回は絞りに絞って4つの美術館、ギャラリーをご紹介します。 

GASK(ガスク) 

クトナーホラの聖バルボラ教会のすぐ手前にある大きなギャラリーです。 

イエズス会学校をもとに、1963年に中央ボヘミアギャラリーとして設立され、1993年から2009年まではチェコ現代美術館、そして現在のガスクギャラリーと名前を変えていきました。20世紀から21世紀のアートを中心に企画展としてチャペック兄弟やイジー・トゥルンカの展示も行われてきました。ギャラリーにはたくさんの部屋やオープンスペースがあり、現代アーティストの展示を取り扱っています。教育の一環として様々なワークショップやイベント、シンポジウムを開催しています。 

中の作りはシンプルなのですが、展示を見ていて出たら一つ下の階にいた、この展示場にはこの階段でないといけない、などちょっと迷います。各所に警備員が立っているので尋ねてみてください。白く重厚な造りの建築にモダンなサインやネオンがガスクギャラリーのコンセプトと合っています。 

私は2020年の2月に、イジートゥルンカと、エヴァ佐久間さんの展示を見に行きました。トゥルンカのこの展示は話題になっていて多くの人が訪れていました。色分けされた部屋に展示された作品や、子供が楽しめるような映像やインタラクションが用意され工夫を凝らしてありました。 

エヴァ佐久間さんの展示

エヴァさんの展示はカフェの横のオープンスペース。カフェも空間もオープニングセレモニーのパーティールームも素敵で、エヴァさんの繊細で不思議な雰囲気の作品に合っていました。ガスクは建物を見るのも楽しいです。 

駅からはちょっと離れているので観光を楽しみながら目指してみてください。 

住所:Barborská 51 28401, Kutna Hora 
開館:火曜〜日曜 10:00〜18:00 
電話:725 377 433 
web:https://www.gask.cz/en 
紹介したアーティスト:イジートゥルンカ、エヴァサクマ 

Oblastní galerie Liberec(通称 lázně)/リベレツ地方ギャラリー 

第二次世界大戦時1945年9月19日リベレツ美術評議会がリベレツ博物館はそのままで、北ボヘミアのアートコレクションを他ギャラリー移動することを決定し、愛国者でアーティストのヤロ・ベランにそれらを託しました。終戦後から2014年2月、現在の場所、かつての市営スパに移るまでギャラリーはその協会のビルを使っていました。 

スパはフランツヨゼフ1世の統治50周年祝いの年、1898年に建てられました。建築家はウイーンのピーターポールブラング。そのデザインは歴史的な作りに則っていて、中には彫刻があります。植物模様の絵画が施され、タイルはVilleroy & Boch社によるものです。スパとしてオーナーが何回も変わり、最後にリベレツ市が買い取った2009年、ギャラリーとして再建することになりました。ギャラリーとしてのリノベーションは、建築家イジー・ブチェックと、エンジニアのカレル・ノヴォトニー率いるLiberec Sial Studioによって企画され、工事が完了したのが2013年でした。このプロジェクトは歴史建築再活用の最も成功した例としてさまざまな賞を受賞しました。 

歴史的な建築の雰囲気を残しつつ、シンプルで美しいギャラリーとしても機能し、さらに新しいイメージを持つタイポグラフィの組み合わせがとても新鮮です。私が行った時はバロック絵画静物画の展示をしていて、空間と作品のコンビネーションが不思議な感じでした。 

住所:Masarykova 723/14, 460 01 Liberec 
開館:火・水・金・土・日 10:00〜17:00 木10:00〜19:00(無料日) 
電話:+420 485 106 325 
web:https://www.ogl.cz/en/ 

Moravská galerie v Brně(Moravian Gallery in Brno)/ブルノモラヴィアギャラリー 

チェコで二番目に大きい美術館で、唯一のヴィジュアルアートのコレクションを持ちます。1963年に始まった国際グラフィックデザインビエンナーレの企画開催として有名です。 

1961年に応用美術館とモラヴィア美術館の絵画ギャラリーの融合として始まりました。 建物はプラジャークパレス、応用美術館、総督邸、ユルコヴィッチュハウス、ヨセフホフマン博物館から成ります。メインとなるのはプラジャークパレスです。 

ブルノモラビアギャラリーは常設展、企画展ともにヨーロッパにおけるチェコのヴィジュアルアートを紹介することを目的としています。展示中はガイドツアーやレクチャー、ワークショップ、コンサートやパフォーマンと行ったプログラムも企画されています。 

私もビエンナーレ目的で訪れました。受賞作品ほか、チェコのタイポグラファーでメタルミュージシャンのフランティシェック・シュトロームのリノカットの展示や、ポルトガルのグラフィックアート展が行われていました。広い空間を贅沢に使った面白いレイアウトの展示方法も見ものです。次回は2022年です。 

住所: 
– Pražák Palace(プラジャークパレス)/  Husova 18, 662 26 Brno, Czech Republic 
– Museum of Applied Arts(応用美術館)/  Husova 14, 662 26 Brno, Czech Republic 
– Governor’s Palace(総督邸)/  Moravské náměstí 1a, Brno, Czech Republic 
– Josef Hoffmann Museum(ヨセフホフマン博物館)/  náměstí Svobody 263, Brtnice 
– Jurkovič House(ユルコヴィッチュハウス)/  Jana Nečase 2, Brno – Žabovřesky 

開館:水・金・土・日 10:00〜18:00 木 10:00〜19:00 ※応用美術館は2021年春まで閉館 
電話:+420 532 169 111  
web:http://www.moravska-galerie.cz/ 

Egon Schiele Art Centrum(エゴンシーレアートセンター) 

Egon Schiele Art Centrum Český Krumlov 2020, Photographer: Libor Svacek; box@fotosvacek.cz; Cesky Krumlov; CZ.

チェコ、オーストリア、アメリカのグループによって1992年に協会が設立され、国際的なサポートの元、1993年11月にエゴンシーレの展覧会とともにオープンしました。 建物は16世紀の元醸造所です。 

Egon Schiele Art Centrum Cesky Krumlov 2019 – interiery Photographer: Libor Svacek; box@fotosvacek.cz; Cesky Krumlov; CZ.
Egon Schiele Art Centrum Cesky Krumlov 2019 – interiery Photographer: Libor Svacek; box@fotosvacek.cz; Cesky Krumlov; CZ.
大成哲さんの作品
Egon Schiele Art Centrum Český Krumlov 2020, Photographer: Libor Svacek; box@fotosvacek.cz; Cesky Krumlov; CZ.

エゴンシーレの生涯のドキュメンタリー、水彩のドローイングといった常設展以外は企画展が開催されています。国際交流の貢献として、主に東西ヨーロッパのアーティストが長期滞在制作できるアトリエがあり、滞在制作展も行われます。この夏にそのオープニングに足を運び、日本人彫刻家の大成哲さんの作品を拝見してきました。階段付きの、天井の高い空間に存在する巨大なガラスの作品で、チェスキークルムロフの街を形成しています。ガラスの加工や光の具合、暗い空間が作品をさらに幻想的に魅せていました。私が最初にエゴンシーレアートセンターを訪れたのはヨゼフ・バハールのチェコのシュマヴァの森をテーマにした木版画の展示の時で、繊細で美しく、独特な色使いの作品に深く感動した記憶があります。 

住所:Široká 71, 381 01 Český Krumlov 
開館:火曜〜日曜 10:00〜18:00 
電話:+420 380 704 011 
web:http://www.esac.cz/en/egon_schiele_art_centrum/ 

最後に

歴史的背景、文化を豊かにしたいという気持ちのもと設立された、地域性を生かした各美術館やギャラリー。ご紹介した場所はプラハ以外の観光地としても人気の場所でアクセスも良いので、観光プランに是非組み込んでみてください。アートも建物も両方お楽しみください。 

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この記事を書いた人

松本沙希

東京、プラハを拠点に活動するイラストレーター・グラフィックデザイナー。日本で就業後、渡英、のちプラハ工芸美術大学イラストレーショングラフィック科修士課程修了。ポスター、市の発行物や絵本の出版に携わり、IBBY児童書大賞チェコ支部、Brno16国際ショートフィルムコンペの審査員を務めた。2019、2020年度チェコ親善アンバサダー。