2月のおすすめアートイベント”Grafika Roku” と”Klauzura”

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本日からイラストレーター・グラフィックデザイナーでありチェコ親善アンバサダーの松本沙希さんの新連載を開始します!
昨年からプラハに滞在している松本さんには、アート分野での情報を中心に発信して頂きます。

第一弾は毎年2月に楽しめるアートイベントです。
一般的な美術館や博物館とは少し異なる楽しみ方ができる通なイベントです。
それではどうぞ!!

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冬の間は地方のお城は閉まっているし、2月はさらにイベントも特にない、クリスマスマーケット終わり、ファーマーズマーケットも冬季休業中。日も短いので自ずと屋内の展示やアクティビティが観光の助けとなります。ミュシャ美術館もいいけれど、せっかくなので2月にしか見れないものも見てみたい。

そんな中でお勧めしたいアート展を2つご紹介します。

年間ベストグラフィック大賞展”Grafika Roku”

ひとつは、101年の歴史を持つアートプリントの団体HOLLARが主宰する、コンペティションGrafika Roku(グラフィカロク)チェコ文化省、プラハ市、プラハ1区を始め様々な大学やギャラリーの協賛により市民会館で展示とセレモニーが行われます。

コンペティションの規定としては必ずプリントであること。要するに一点物ではなく複製物であること。手描きのものや絵画は選考外です。審査員は毎年変わり、アーティストのほか大学の教授なども推薦されます。入賞作品はまたそこからさらに本、シルクスクリーン、銅版画、石版画、デジタル、学生、小さなフォーマット、総合と、各部門賞が設けられています。

展覧会初日は授賞発表式とオープニングセレモニーが開催されます。私は今年総合部門にノミネートされ、招待されたので参加しました。

1階の広間の一つで各賞の発表が行われ、その後4階の展示会場でDJとワインを楽しみながら展示を見ることができます。チェコで開催されるグラフィックのコンペ展としては最大でやはり力を入れているらしく、場所柄ほかの展示のオープニング以上にやはり派手です。

展覧会は約1か月開催され、その間も様々なワークショップも行われます。高度な版画技法や有名人の作品が見れるため、学生の団体の観覧者もとても多く(学生は150円で入れます)チェコがアート教育に熱いのもまた感じ取ることができます。

オープニング後は一般観覧可能なのでこの時期にご旅行に行かれる方は市民会館のツアーと併せてぜひ見ていただきたい展覧会の一つです。

Grafika Roku

美術大学の期末展”Klauzura”

もうひとつは、各大学が学期末を迎え(チェコは10〜2月の冬セメスター、2〜6月の夏セメスターの2学期制です。)プラハの4大美術大学が期末展覧会を開催します。

プラハで、もといチェコのメインの美術大学は応用美術のチェコ工芸美術大学(通称UMPRUM)、映像美術のプラハ芸術アカデミー映像学部(通称FAMU)、シアター美術のプラハ芸術アカデミー演劇学部(通称DAMU)、そしてチェコ最古の国立芸術アカデミー(通称AVU)。夏の年度末展覧会の途中経過だったり、小規模な学期末発表だったり学校によってまちまちですが、どちらにしても2月にそのセメスターの成績がつきます。そのため学生は年明けから期末展に向けては特に忙しい制作の日々を送ることになります。

一般の人が中に入って学生の作品を見れる事が最大の特徴。各大学およそ5日間のみの展示なので、その時期にプラハにいらっしゃるなら是非訪れてみてください。建物に入るだけでも楽しいです。今回は冬の期末展でも夏と同じくらいの規模で展開するUMPRUMをご紹介します。

オープニングは17:00から。その日の昼くらいまでプレゼンテーションが行われているので、学生にとってはとてもせわしなく楽しい一日になります。一般の人ももちろん入れます、が、作品を見るのは困難を極めます。どこでも音楽、ビール、騒ぐ人。。学校全体がパーティー会場のようです。

イラストレーション学科やタイポグラフィ学科では学生の本やポスターを買うことができます。アニメーション学科は学科共通テーマと、自主作品のスクリーニング。学科によっては外部の会社や市とコラボレーションして作品を作っていたり、学科を超えた共作を発表しています。各学科室には必ず学生がいるので、話しかけてみても良いですね!

Klauzura

冬で景色はあんまり楽しめないけれど、夜の鬱蒼とした雰囲気とアーティストの熱い制作熱を2月にはご堪能できます!
観光客も少なく、おそらく他シーズンよりも安いのでこの時期のご観光も旅行は穴場かもしれません。
新型コロナウイルスの感染拡大が落ち着いてまたチェコへの旅行ができるようになったら、ぜひ訪れてみてください。

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この記事を書いた人

松本沙希

東京、プラハを拠点に活動するイラストレーター・グラフィックデザイナー。日本で就業後、渡英、のちプラハ工芸美術大学イラストレーショングラフィック科修士課程修了。ポスター、市の発行物や絵本の出版に携わり、IBBY児童書大賞チェコ支部、Brno16国際ショートフィルムコンペの審査員を務めた。2019、2020年度チェコ親善アンバサダー。