チェコで学ぶアニマルライツ 
~動物と共生するFarma Nadějeの活動~

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プラハから車やバスで1時間ほどの町、クトナー・ホラにほど近いドブロヴィートフ村にある牧場、ファルマ ナデイェ「Farma Naděje」。ここでは様々な種類の動物が、広い敷地でのびのびと暮らしています。まさに「牧場」というイメージにぴったりの場所ですが、この環境は動物たちにとって奇跡のような場所なのです。

ファームアニマルとアニマルライツ

Farma Nadějeには、いわゆる「ファームアニマル」だった動物たちが多く暮らしています。日本ではあまり聞きなれない言葉ですが、農業のために飼育されている動物たちのことを差します。

このような動物たちは、狭いスペースに閉じ込められたり、頻繁に妊娠と出産を繰り返させられたりとストレスが多い環境で飼育されています。そのため、自由に野原を駆け回ったり、好きな時に横になったりなど、動物らしい暮らしを許されていないことが多いのです。そのような現状が問題視され、欧米を中心に「アニマルライツ」への注目が高まっています。アニマルライツとは、「動物が動物らしく生きる権利」のことです。

友人の誘いで訪れたFarma Nadějeですが、アニマルライツについて考えるきっかけになったので、みなさんにご紹介したいと思います。

Farma Nadějeについて

牧場の名前「Naděje」はチェコ語で「希望」を意味します。
ファームアニマルとして搾取される動物と、ペットとして可愛がられる動物。どちらも同じように愛や喜び、苦しみを経験していること。そして、人々が動物たちを搾取することなく、動物性食品なしで健康で幸せな生活を送ることができることをFarma Nadějeは伝えています。

広々としたこの牧場は、農場の会長Marieさんをはじめとする人々の努力で支えられています。総面積2.6ヘクタールの草地を整備し、柵をたて、木を植えて・・・。動物と人間が共生できる、まさに「生きとし生けるものへの希望」の場所を1からつくっているのです。

それでは、Farma Nadějeの具体的な活動をご紹介しましょう。

動物の保護活動

劣悪な環境で飼育されている動物の保護活動をしています。ファームでは様々な事情を抱えた動物たちが暮らしています。

屠殺場へ送られる寸前だった小ヤギ。繁殖目的で購入されたはずが、失敗したために、食肉処理場に売られることになっていたブタ。工事現場の片隅で育ち、危険な目に遭っていた小猫。現在牧場には、そのように保護された約80匹の保護動物(子羊、羊、ヤギの子供、子豚、ウサギ、鶏、雄鶏、猫、牛、ロバなど)が暮らしています。もちろん、新しい動物たちの受け入れも継続して行っています。

保護された動物の中には劣悪な環境に置かれていたため、体が不自由な子も多くいます。今直ぐにでも手術をしたいそうなのですが、治療費が高額なため中々実行に移せないそうです。また、約80匹に及ぶ動物たちの食費は1ヶ月に約75万円になるそうで、活動の維持は容易いことではないとマリエさんは語ってくれました。

ヴィーガン食の実践

ファームアニマルに関心を持つ人はまだまだ少数で、動物食品の生産過程でどのような目に遭わされているのか知らない人も多いでしょう。ファームアニマルは商品ではなく、私たちと同じように喜怒哀楽や思考があり、ペットと同じように大切にされるべき存在です。

そこで、動物性食品に頼らず、健康的で充実した生活を送ることで、ファームアニマルもペットと同様に搾取される必要がないこと示そうとしています。

ボランティアの受け入れ

毎月最後の週末にボランティアを受け入れるイベントを開催しています。国内外から集まった人々と共に、動物の世話や、施設の整備などをします。今回私たちは1泊2日のお手伝いでしたが、1週間や1ヶ月くらいここで生活をする人もいるようです。ファームの活動に貢献できる喜びはもちろんですが、牧場に集まった人々とアニマルライツについて意見を交わすことは大変な刺激になります。

インベント時だけでなく、長期間でのボランティアも受け入れているようなので、興味のある方はぜひ気軽にコンタクトしてみて下さい。

Farma Nadějeへの行き方

私たちはプラハから車で牧場まで行きました。プラハから公共交通機関を使う場合は、バスを乗り継ぎ2時間ほどで行けるようです。
https://www.google.com/maps/place/Farma+Naděje/@49.7856792,15.3232243,19z/data=!3m1!4b1!4m5!3m4!1s0x470c5af59be1970d:0xe4569d11ab708e75!8m2!3d49.7856783!4d15.3237715?hl=cs&shorturl=1

農場の中は・・・

牧場では、数種類の動物が同じ空間にいても喧嘩をすることなく、リラックスして暮らしていまます。鹿に体を擦り付けて甘えている猫や、追いかけっこをするウリ坊の猪たちなど、動物同士がとても仲良しで平和な様子に驚きました。

また、動物たちは私たち人に対してもフレンドリーで、撫でて欲しそうに寄ってきます。農場のスタッフさんに愛されて暮らしているお陰なのだろうと感じました。

ボランティアの仕事内容

私たちに割り当てられたのは、木を植える場所を作る仕事でした。タイヤで大きな植木鉢を作り、その中に土を入れ、木を植えます。そこに今後土を被せ、風の防波堤を作ります。普段の生活でここまで体を動かすことがないので、良い運動になりました。また、日本ではなかなか見られない緑いっぱいの平原と、開放感溢れる広い空の下で良い気分で作業ができました。

ちなみに他のボランティアの方々は、動物の生活スペースに池を作ったり、農場に野菜を植えたり、“ティピ” という大きなテントを建てたりしていました。

夜のイベント

夕食は建てたばかりのティピの中で、焚き火を囲みながらヴィーガン食をいただきました。私たちが参加した日はミュージシャンの男性がいたので、生演奏のコンサートが始まりました。夜も更けティピから出ると、そこには満天の星空が広がっていました。動物にも人間にも、ここは最高の環境だと実感しました。

感想

Farma Nadějeに行くまでは、アニマルライツについて深く考えたことがなかったのですが、ファームアニマルの置かれている現状に目を向ける良いきっかけとなりました。フレンドリーに接してくれた動物たちは、私たちが普段大切にしているペットと何ら変わりはありませんでした。

今すぐに完璧なヴィーガン食を実践するというのは、私にとってハードルが高いのですが、普段の買い物でスーパーに並ぶまでの背景を考え、商品を選ぶようになりました。

最後に

「興味はあるけど直ぐにはボランティアに参加できない」という方は、募金でこのファームを支援することができます。サイト内のこちらのページ(https://ib.fio.cz/ib/transparent?a=2300769996)では、募金金額と支出内容を全て確認できる透明性を持って事業が行われています。

会長のMarieさんが語ってくれたこと以外にも、牧場の運営には莫大な金額がかかっているはずだと思います。
今回の記事を見てアニマルライツに関心を持ってくださった方は、ぜひFarma NadějeのHPを見てみてください。チェコ語のみのHPですが、翻訳サイトを使って細部まで読んでみると、今まで知らなかった動物の世界を知れることでしょう。

店舗情報

Farma Naděje
・住所: 33836, 286 01 Dobrovítov
・電話番号: +420 777 633 561
・メール: info@farmanadeje.cz
・URL: https://farmanadeje.cz
・Facebook:https://www.facebook.com/farmanadeje/events/?ref=page_internal
・Instagram:https://www.instagram.com/farmanadeje/
※農場に行かれる際は、電話での予約が必要です。(Marieさんは英語も通じます)

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この記事を書いた人

アートサバイブログ

アートメディア「アートサバイブログ」です。「クリエイティブに世界をサバイブする」をテーマに、チェコを中心としたヨーロッパのアートシーンや、アーティストサバイブ情報などを発信しています。活動拠点としているプラハは常に新しい魅力に溢れています。みなさんの好奇心を刺激するホットな情報から、ディープなスポットまでお届けできたらと思います。