旅情あふれるチェコ各地の鉄道駅
チェコ鉄道が選んだ10美駅
チェコ共和国を鉄道で旅するときの楽しみのひとつに、美しい駅めぐりが挙げられるのではないかと思っています。すでにご紹介したプラハ本駅やプルゼニュ本駅がその代表的な存在でありますが、主要都市の本駅クラスではない、普通列車しか停車しないような小さな駅にも美しい駅が多く、したがって乗車中は車窓から一時たりとも目が離せません。
チェコの鉄道駅が美しいというのは何も外国人だけではないようで、チェコで旅客鉄道を主に担う100%政府出資の鉄道会社チェコ鉄道は、国内の美しい10駅を選定しているので、この機会にご紹介したいと思います。
≪チェコ鉄道が選んだチェコの美しい駅10選≫
1) プラハ本駅 / Praha hlavní nádraží
2) プラハ・マサリク駅 / Praha Masarykovo nádraží
3) パルドゥビツェ駅 / Pardubice
4) チェスカー・トジェボヴァー駅 / Česká Třebová
5) オストラヴァ・スヴィノフ駅 / Ostrava-Svinov
6) チェスキー・ブロド駅 / Český Brod
7) ウヘルスケー・フラジシュチェ駅 / Uherské Hradiště
8) ヘプ駅 / Cheb
9) マリアーンスケー・ラーズニェ駅 / Mariánské Lázně
10) オロモウツ本駅 / Olomouc hlavní nádraží
個人的にはプルゼニュ本駅が入っていないのがやや疑問ではありますが、それ以外はなかなか順当なセレクションではないかと思います(3駅ほど未訪問の駅があり、それらは写真で見ただけなので、えらそうなことはいえませんが…)。しかしながらチェコの鉄道駅の真髄は、地方の小さな駅にこそあるのではないかと思っています。それらの駅はなかなか停車してじっくり観察する時間に恵まれないのが残念ですが、それでもわずかな停車時間の間に精いっぱい鑑賞したいと思っています。

小さな別れが待っている通過駅

地方の町の小さな駅舎と並んで味わい深いのが、停車駅はもちろん通過駅で見送ってくれる駅員の存在です。どんな小さな駅でも、制服姿の駅員が直立不動。その空間だけ、空気が引き締まっています。律儀な姿に思わず感動するとともに、でもいったいなぜ? と思っていましたが、撮影で訪れたフルボカー・ナド・ヴルタヴォウ駅で、その理由がわかりました。

森のなかのフルボカー・ナド・ヴルタヴォウ駅は、列車の往来のないふだんは、周囲の木々が音を吸い込んでしまうようで、しんと静まり返っています。通過列車の時刻を尋ねようと駅事務室をのぞいても、駅員の姿は見当たりません。島式ホームに出て、周囲の様子を撮影していると、ちょうどチェスケー・ブディェヨヴィツェ方面から、普通列車がゆっくりやってきて停車しました。その一部始終を撮って、何気なく駅舎側に戻ろうとすると、「◎△◇□!!」と、チェコ語で怒鳴られました。いつの間にか駅舎の前には若い女性の駅員さんが立っています。思わず固まる私。すると反対側の森のなかから汽笛が聞こえ、少し待つと、プルゼニュ方面からの列車が遠くからゆっくりゆっくり近づいてきたのでした。
改札のないチェコの駅では、子どもでも、あるいは状況のよくわかっていない外国人でも、だれでも自由に立ち入れてしまいます。そして、そんなひとたちが思わぬ事故に遭わないよう、見張っていてくれるようでした。
プルゼニュ方面、チェスケー・ブディェヨヴィツェ方面それぞれの列車の出発後、無事に駅舎に戻り、駅員さんに「Děkujiヂェクイ(ありがとうございます)」。にっこり笑ってくれました。この「チェコ共和国 オフィシャルブログ」の7月11日付け記事「チェコ旅行に役立つ10のフレーズ【その1】」を旅行前に覚えることは必須ですね。
ということで、ほんのわずかの列車の通過時にも、ぜひ各地の駅の駅員さんの美しい立ち姿とたたずまいを目に焼き付け、旅情を感じていただきたいと思います。

※トップ画像キャプチャ※
アールヌーヴォー様式が美しいチェスケー・ブディェヨヴィツェ駅。オーストリアに近く、リンツ中央駅行きの国際列車が発着する。旧市街へは徒歩10分ほど。