9月のブルノでブルチャークを

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モラヴィアの秋の風物詩

いよいよ近づいてきたシルバーウィークの連休で、チェコの国土の東側半分を占めるモラヴィア地方を訪問される方も多いかと思います。モラヴィア地方の玄関口といえば、チェコ第二の街ブルノ。ブルノ本駅に降り立ったら、モラヴィア地方の各地へと乗り継ぐ前に、わざわざ途中下車してでも、ぜひ味わっていただきたいものがあります。それが、ブドウの甘味をたっぷり楽しめる若々しいドリンク「ブルチャークBurčák」です。

大聖堂がそびえる旧市街に隣接するブルノ本駅。

ブルチャークとは?

ブルチャークとはワインになる手前のブドウの絞り汁で、発酵途中の状態をいただきます。その年に収穫したばかりのブドウからできるので、味わえるのは9月から10月にかけてという期間限定。まさにモラヴィア地方の秋の風物詩といった飲み物です。

ブルノ本駅前に出ていたブルチャークの屋台。定番の白のほか、赤も楽しめる。

スタンダードな白は、澄んだ白ワインとはまったく異なるベージュ系の野趣あふれる色味で、発酵途中なので濁っており、舌先に若干の発泡性を感じます。濃厚で果実味あふれるジュースのようなまろやかな口当たりですが、5~6%程度のアルコール分も含まれています。ブドウジュースのようなやさしいテイストに、思わずごくごく飲みたくなってしまいますが、お酒に弱い方は要注意。かつてはワイン醸造家だけがひそかに楽しんでいたということですが、近年はモラヴィア地方の各地だけでなく、プラハ市内のワイン酒場などでも楽しめるようになっています。

「Burčák」と大きく書かれたブルチャークの屋台。この屋台の値段は、0.2Lで20チェコ・コルナ、0.5Lで50チェコ・コルナ、1Lで100チェコ・コルナ。ペットボトル代は別途で5チェコ・コルナ(価格は2017年9月に調査したもの)。

まだ発酵途中のブルチャークは、ガラスのボトルに瓶詰めができず、売り場のスタンドで使い捨てのカップに注いでもらったものをその場でいただくか、ペットボトルに詰めてもらって持ち帰ります。そのとき、キャップをしっかり締めてしまうと、発酵が進むと吹きこぼれてしまうので要注意です。

ブルチャークの屋台はブルノ本駅の周辺をはじめ、青果市場など町のあちこちで見かけることができます。「Burčák」と書かれた看板を見つけたら、ぜひ立ち寄ってみましょう。たいていの屋台ではブルチャークを、昔ながらの木樽から注いでくれます。地元の人にならってその場でぐっとひっかけるのがとってもいい感じ。ブドウの甘い香りに誘われて、屋台の周りにはミツバチが多く集まるのが特徴でもあります。

9月になるとブルチャーク屋台も立つ青果市場は、ブルノ本駅から徒歩約5分。

この季節は是非とも電車でブルノへ

ブルノへは、プラハからICやECなどの特急列車に乗って2時間30分ほどでアクセスできます。またウィーン中央駅からなら、プラハ本駅行き高速列車レイルジェットでわずか1時間30分。したがってウィーンから日帰りでブルノを訪れるのもおすすめです。

さて、モラヴィア地方南部のオーストリアとの国境地帯といえばワインの名産地。次回はブルノからぜひ訪れたい小さな村ミクロフをご紹介したいと思います。

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この記事を書いた人

戸部 勲

毎年ヨーロッパのあちこちの鉄道に乗って取材して、鉄道旅行の楽しさを伝えるムックや書籍を作っている、イカロス出版の編集部員です。
チェコ共和国の旅客鉄道は日本同様、予約なしで気軽に利用できる公共交通手段。ローカル線から長距離列車、高速列車から夜行列車、国際列車まで、さまざまな種類の列車が走っています。
鉄道旅行の魅力は、住人目線で旅ができること。チェコの魅力にはまってリピーターになって、「もっと深くチェコを知りたい」、「もっとディープな旅がしたい」という想いを抑えきれなくなったら、ぜひプラハ本駅から鉄道に飛び乗って、風任せの自由気ままな旅を楽しんでみてはいかがでしょうか。