ブルノにある鉄道模型の聖地
チェコ最大のHOレイアウト
今回は少々、趣向を変えて、ブルノにある鉄道模型が
ブルノ本駅から徒歩すぐの、地元の人々が買い物に訪れるにぎやかな商店街。その一角に建つ商業ビルの2階には、ミニカーやラジコンカー、鉄道模型などを扱う模型屋さんがひっそりとたたずんでいます。

一見、なんでもない店構えのお店です。何かとあわただしい旅先であったなら、ひと通り品ぞろえを眺めて掘り出し物があるかチェックし、とくに収穫がないようなら、そのまま立ち去ってしまうことでしょう。でももし後になって、店内のさらに奥の部屋に、チェコ国内最大規模といわれるHOゲージのレイアウトが広がっているのを知ったなら、激しく後悔すること必至なのであります(鉄道ファン限定ではありますが)。

チェコのお隣のドイツでは鉄道趣味が盛んです。ベルリン動物園駅やベルリン東駅などの主要都市の駅構内では、通りがかった人がコインを入れて自由に運転できるようなレイアウトが、趣味と実益を兼ねて置かれている風景をよく目にします。またドイツ南部ゲッピンゲン(バーデン=ヴュルテンベルク州)に本社のある鉄道模型メーカーのメルクリンは、日本にも多くのコレクターやファンがいますね。
一方、チェコの駅ではついぞ(最大規模のプラハ本駅でも)、そのような景色を見たことがなかったため、てっきりチェコは鉄道趣味が不毛の地なのだろうと思っていました。ところがブルノ市の観光局によると、ブルノ市内に鉄道模型ファンの聖地があるのだとか。それが、この「モデル・ワールド」なのです。

必見の美しい夜景モード
15畳ほどの広さの独立した空間には、コの字型に巨大なレイアウトが鎮座しています。
鉄道駅を中心に商店街や家並み、工事現場、丘陵地帯や水量豊富な河川、そして木々の緑が広がり、自動車やトラム、消防車などが散りばめられています。
そんないかにもヨーロッパらしい街並みを縫うようにして、客車列車や高速列車、貨物列車など、約40編成の列車が縦横無尽に行き交っています。


来訪者はやはり子供連れの家族が多いですが、そんなファミリーたちに混ざって、「いい年をした」おとなであっても、ここでは心行くまで、うっとり夢見心地の時間を過ごせるのです。さらに20分ごとに、昼から夜へと時間帯が入れ替わる演出もすてきです。
天井は一転して満天の星空に変わり、夜の帳が下りたレイアウトは、街や家の灯りがまばゆく光り、ひと際ロマンティックな空間へと移ろいます。そしてそのなかを、家路につくかのようにひたむきに走り続ける長大編成の旅客列車…。独特の旅情が味わえる夜景は、決して見逃すことができません。

いつまでもこの世界に浸っていたい――。そんな気持ちにさせてくれる、ミュージアムのような空間の「モデル・ワールド」です。