[インタビューシリーズ]チェコで活躍する日本人第一弾〜アイスホッケー選手 桶川裕矢さん〜

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チェコの国技といえばアイスホッケー! 

日本ではマイナーなスポーツですが、チェコでは大人も子供もアイスホッケーが大好きです。日本人の子供たちがバットとグローブを持っているように、チェコの子供たちはスケートリンクにスケート靴とスティックを持って出かけます。 

ちなみに、1998年の長野オリンピックでチェコが金メダルを獲得したため、日本についてよく知らなくても「長野」のことは知っているチェコ人が多いです。 

今回は、アイスホッケー大国のチェコで、アイスホッケー3部リーグのHC Řisutyで唯一の日本人選手として活躍している桶川裕矢さんに、11年目のチェコ生活、そして彼のアイスホッケーに対する思いについてお話をお伺いしました。 

写真/ 桶川さん提供

アイスホッケーを始めたきっかけはなんですか? 

当時住んでいた仙台で小学校5年生の時に、妹が通っていた幼稚園の息子がアイスホッケーをやっていて、体験会に誘われたことがきっかけでした。 特に興味があったわけではなかったのですが、始めたら楽しくて今でも続いている感じです。  

チェコに興味を持ったきっかけ、またはチェコに来たきっかけはなんですか? 

NHL(ナショナルホッケーリーグ)に憧れ、海外でアイスホッケーをすることに興味を持ち始めた頃、アイスホッケー合宿のコーチから、アイスホッケーをするためにチェコのプラハに移住した日本人家族を紹介されました。北米だけでなく、ヨーロッパでの選択肢もあることをそこで初めて知りました。その後体験として2週間プラハに行ったのがきっかけです。チームの練習に参加し、アイスホッケーをする毎日がとても楽しかったので、チェコでアイスホッケーをするんだと決意しました。14歳の時にチェコに来たので、もう11年になります。 

チェコでアイスホッケーをする上で、大変なことはありましたか

1番大変だったことは言語です。英語も得意ではなかったので最初は身振り手振りで意思を伝えていました。練習中は問題なかったのですが、監督やチームメイトと十分にコミュニケーションを取ることが難しく、それが仇となることもありました。そんな中でも、助けてくれる人がたくさんいたので辛くて日本に帰りたいということはありませんでした。 

ホッケーだと、体格の差ですね。チェコ人は10代でも体格が大きい人が多く、どのチームでも身長172cmの僕が1番小さかったです。高校生チームの平均身長が177cmなんですよ(笑)どうしても体格の差があるので気をつける必要がありました。 

いつ頃からチェコ語でコミュニケーションを取れるようになりましたか?

相手が何を言っているのか分かるようになったのは2年目からです。当時は挨拶よりもアイスホッケーに関する単語を頑張って覚えました。  

文化の違いで困ったことはありましたか? 

大好きなアイスホッケーに浸る生活をしていたので、カルチャーショックとかはなかったですね。チームメイトと僕の性格は全く違って、僕の性格はおとなしくて自己主張するタイプではないのですが、チームメイトはその違いを理解し、快く受け入れてくれました。

写真/ 桶川さん提供

日本とチェコで、プレースタイルや指導の違いなどはありますか?

今の日本についてはわからないのですが、僕が仙台でチームに入っていた時は、基本が重要視されていたと思います。パックを持たずにスケーティングする練習が1時間半の練習内の45分はあったと覚えています。 チェコでは技術面を重要視しています。テクニック重視のパス練習やハンドリング練習が多いです。チェコの選手は小さい頃からパックさばきが上手なんですよ。スケーティング練習もしますが、パックを持ちながらです。 

他にはチェコだと、ジュニアの頃から毎週末試合があります。日本に居た頃は、試合は月に1、2回でした。日本ではトーナメント方式が主流ですが、チェコは基本的にリーグ戦方式です。子供の頃から、試合をたくさん経験できるので、チェコの選手は経験値が大きいです。 

チェコに来たことは、選手としての成長にどのような影響があったと思いますか? 

選手としての自信ですね。チェコに来て以来、10シーズン近くプレーしてきて、納得するシーズンもあれば苦い経験もありました。トライアウトで合格し、リーグからの降格も経験しました。14歳の時にチェコに来てから、今はセミプロとして報酬をもらいながらプレーし続けてこられたのは、日本にいてはできなかった経験だと思っています。 チェコでアイスホッケーをしてきた11年の経験が今の自信につながっています。 

チェコの選手で特に印象に残っている選手はいますか? 

高校1年生の時のチームの時に、一緒にフォーワードのラインを組んだ選手にすごく助けられました。当時は2部でプレーしていたのですが、彼が背中を押してくれたおかげで1部のトライアウトに挑戦することができました。彼は今でも、同じプレーヤーとしてだけでなく、私生活でも仲の良い友人です。同じ時期の監督も印象に残っています。その監督は、外国人である僕を特別扱いすることなく、チームの全員に平等に接してくれました。このシーズンは、いい仲間に恵まれて一番成長できたシーズンだと思います。 

写真/ 桶川さん提供

チェコで達成したい目標などありますか? 

今シーズンは、チームとして3部残留を目標に掲げているので、そのために少しでもチームの力になり、貢献することです。来シーズン以降は、ゴールを決めるだけでなく、アシストなどのサポート役としても活躍できるよう努力したいと思います。 

チェコでのプレーで得た経験やスキルを、今後どのように活かしていこうと考えていますか? 

まずは応援してくれている人への恩返しがしたいです。毎回、何百人もの人が試合を見に来てくれます。今シーズンの試合では3、40人ほどのチェコ在住の日本人が応援しにきてくれました。日々サポートしてくれる人が、たくさんいるというのを実感しています。応援してくれている人たちの期待を応えられるようにしたいです。 また、チェコにいる中で築いた繋がりも大切にしていきたいです。 

将来、アイスホッケーを続けるかどうかはわかりませんが、アスリートとしての知識や経験を活かして、スポーツに携われるような仕事がしたいです。 

チェコでの生活で気に入っている、習慣や食べ物はありますか? 

好きな習慣は、スーパーでもどこでもDobrý den(こんにちは)やDěkuji(ありがとう)と挨拶を欠かさないところです。僕自身も、日本に一時帰国した時もどこでも挨拶するようになりました。 

チェコ料理だとタタラークが好きです。日本では食べられないので、5、6皿食べてか日本に帰ります(笑) 他には、オヴォツニー・スヴィエトゾル(Ovocný Světozor)というケーキ屋さんのハルレキン(Harlequin)というチョコレートケーキが大好きで、8年間ずっと誕生日ケーキの定番です。

ムーステク(Můstek)駅のオヴォツニー・スヴィエトゾル
桶川さんのお気に入りのハルレキン(Harlequin) 

チェコを訪れる人に、ぜひ見てほしい、またはあまり知られていない観光スポットがあれば教えてください。

プラハのO2アリーナでスパルタプラハのアイスホッケー観戦なんてどうでしょうか。チェコ人のアイスホッケー愛を感じることができます。ルールがわからなくても、エンターテイメントな企画があるので楽しめると思います! 

最後にこれからチェコに留学する人や、海外でアスリートとして活躍したい日本人にアドバイスをお願いします。 

留学するとなると、外国人という立場になるので、理不尽なことや思い通りにいかないことがあると思います。いちいち悩んだりせずに「こういうものなんだ」という気持ちでいる方が楽しめると思います。また、何か嫌なことがあっても、1人で抱え込まずに親や友達など吐き出せる相手と相談する時間を作ることも大切です。気持ちが楽になると、頑張れる勇気が湧いてくるはずです。 

アスリートとしては、言語の習得が大事になっていきます。その国の言語がわかるようになることで、信頼関係が築きやすくなり、人とのつながりやチャンスも広がります。 

現実的な面だと、ビザの準備を怠らないことです。どんな形でも、海外に出たいと思う勇気が価値のあることだと思うので、初心を忘れずにいてほしいです。 

どんな形であれ、海外に行きたい、挑戦したいと思う勇気にこそ価値があると思うので、初心を忘れずにいてほしいです。 


記念すべき第1回目の「チェコで活躍する日本人」はどうでしたか? 

今回は、チェコに限らず、ヨーロッパでも数少ない日本人アイスホッケー選手、桶川裕矢さんにインタビューさせていただきました。 

14歳から単身でチェコに留学した桶川さん。 桶川さんの一つ一つのエピソードからは、アイスホッケーに対する情熱と10代の頃からチェコで積み重ねた経験からくる「芯の強さ」を感じることができました。 

桶川さんの情報はこちら

Twitter: @okegawayuya

桶川さんの所属するHC Řisutyの試合情報はこちらから確認できます。 

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この記事を書いた人

西村柚佳

チェコ政府観光局インターン。2020年9月からチェコのプラハに留学中。現地の大学で観光学を学んでいます。