チェコデザイン展に寄せて―テキスタイルユニットGEOMETRの日本滞在

  • ブックマーク

チェコセンターで11月15日(金)まで開催中の「THE STORY OF CZECH DESIGN チェコ・デザインの今」展
もうご覧になっていただけましたか?

(展覧会の詳細はこちら http://tokyo.czechcentres.cz/program/more/the-story-of-czech-design/

オープニングイベントからたくさんのお客様にご好評をいただいているこの展覧会。
選び抜かれた展示作品のうち、唯一の布製品『コントラスト&コンテクスト』(2017)を手掛けているのは、チェコのテキスタイルユニット・GEOMETRです。ふたりはこの作品でチェコ・グランド・デザイン新人賞を獲得し、副賞の研究滞在として今年5月に来日を果たしました。

日本ではチェコセンターでイベントを行なったほか、各地のアトリエやギャラリーなどを訪れ、藍染めにも取り組んでいたふたり。
滞在中、どんな出会いや学びがあったのでしょうか?

今回はGEOMETRのクラーラ・スピシュコヴァーさんとリンダ・カプラノヴァーさんからの記事をお届けします。
読んだあとはふたりの作品を見にチェコセンターへいらしてくださいね!
(下の写真は5月のイベントのものです)

 

5月のイベントではたくさんの作品が展示されました!

日本で2週間を過ごしました!

…と言っても、いきなり何の話?と思われるかもしれませんね。では、ちゃんと一から書きたいと思います。

私たちはチェコ・グランド・デザイン新人賞を獲得し、研究滞在という素敵な副賞をもらいました。
世界中のチェコセンターの拠点のなかから滞在地を自分たちで選ぶことができるので、どこにするか悩みましたが、私たちの専門、そして特にデザインや芸術に関する個人的な好みをよく考えた末に、やはり日本が理想的な目的地であるという答えにたどり着きました。チェコセンター本局(プラハ)のヤナ・ポリーフコヴァーさんとチェコセンター東京の高嶺エヴァさんに滞在について相談に乗っていただき、ついに、日本での研究へ向けて旅に出かけました!

 

 

日本に着いた瞬間から、この滞在は本当に面白い冒険になると感じていました。日本、そして日本文化について間接的に得た情報や無意識に作ったイメージは、実際に毎日経験することと全然違う!ということにすぐ気付いたからです。

最初の一週間はチェコセンターの支援のおかげでホテル代や食事代を気にせず東京で快適に過ごすことができました。私たちの作品はチェコセンターで展示され、たくさんの方々に紹介する機会をいただきました。
残りの一週間は日本の観光地を訪れることにしました。それぞれの都市で建物の様子が異なっており、アトリエやギャラリー、美術館でデザイナーと織物のアーティストに会ったときに、建築と作品が調和しているのを感じました。

チェコセンターでのプレゼンテーション

館長の高嶺さんのご協力のおかげで、チェコセンター自体に興味があるお客さんだけでなく、美術館の代表者(例えば森美術館の宮原洋子館長)、デザイナー、織物のアーティスト、また「無印良品」を手掛ける株式会社良品企画の方々まで、多くの方々がプレゼンテーションを聞きに集まってくださいました。

チェコセンターの高嶺さんが通訳をしてくれました

具体的にお名前を挙げると、須藤玲子さん、冨田潤さんと堀ノ内麻世さん、新道弘之さん、福本潮子さん(F.Suchomelさんのご協力によって)、横浜美術大学の高瀬ゆり教授など様々な方にお会いし、アトリエやギャラリー訪問の機会もいただくことができました。
すべてが刺激的な出会いで、そこからたくさんのインスピレーションを受けました。

須藤玲子さん、冨田潤さん、新道弘之さんとともに。

伝統技術をめぐる、チェコと日本の違い

日本で様々な場所を訪れ、新しい出会いを経験するうちに、日本人は織物生産の価値を正しく認識し、尊重していることが分かりました。芸術品でも日用品でも同じことが言えるでしょう。
それに対してチェコではそのような手工芸が大切に扱われておらず、守られていないような気がします。伝統技術は花と同じように、水をやらなければ枯れてしまいますよね。どうしてチェコには日本のような考え方がないのか、またどのようにチェコ人にそれを伝えられるのだろうかという思いが頭に浮かんで、少し落ち込んでしまいました。

もちろん日本でもすべてが順風満帆というわけではなく、国際化に伴って、時間のかかる手工芸は世界の消費者トレンドに合わないという考え方が生まれています。ただ、政府はその考えを受けとめたうえで、伝統を守り続けられるよう、アーティストやデザイナーたちに支援を行なっているのです。

横浜美術大学の高瀬ゆりさんのアトリエ訪問

例えば、金沢市の近くには高品質の設備をもった工場があります。その工場は、設立・運営にあたって政府の支援を受けており、選ばれたデザイナーが一年間そこで制作をすることができるというプロジェクトを実施しています。
このように日本では、現代デザインも伝統技術からインスピレーションを得て行なわれ、「量よりも質」という傾向が見られます。チェコと違って、新しいものは伝統を受け継いでいくことから生まれると考えられているのです。

私たちも今後は、伝統を守りつつ発展させて、競争力のある、アーティストとしての地位を上げられる作品を生み出していこうと決心しました。

藍染め、四国での滞在

私たちは、日本社会と強く結びつきながら今まで伝統をつないできた藍染めにも興味がありました。そこで、東京や美山(京都)の藍染工房や美術館、また、「藍染めの町」と言われている徳島県藍住町にも足を運びました。本藍染矢野工場では、藍草を自分で植え、収穫し、染料を作っています。

徳島県では日本・チェコの美術交流会議にも参加でき、手工芸品やその作り方の観点からチェコと日本の協力の可能性について考える機会となりました。

藍染め体験

また、香川県の直島では、建築家・安藤忠雄の作品世界を鑑賞しました。関わったアーティストの努力や熱意を感じ、忘れられない体験でした。

春の花で彩られた日本を訪れることができて嬉しかったです。また、観光地だけではなく、落ち着いた町も見て歩くことができたのが良かったと思います。
専門的な知識を広げることができましたし、貴重な出会いがたくさんあり、得難い経験になりました。皆さんに心から感謝しています。ありがとうございました!

チェコセンターに展示された作品と

GEOMETR(ゲオメトル)

2016年にクラーラ・スピシュコヴァーとリンダ・カプラノヴァーが設立したテキスタイル&デザインスタジオ。ふたりは2008年にチェコ国立プラハ応用美術大学のテキスタイル制作科で出会った。近年のテキスタイル分野の流れを汲みながら、伝統的な技術に基づいた制作を行っている。テキスタイルの傾向や美学に、作る側の立場として変化をもたらすことを目標としている。建築やプロダクトデザイン、ファッションに使われる生地を主に制作。テキスタイルは家具の飾りにとどまらない独立した芸術品であると考える。鮮やかな色合いと縦糸での表現で自分たちの世界を表現することが多い。彼らの創造力の源となっているのは地方の自然やそこで見られる幾何学である。主な作品は手織り機を使ったタペストリーやテキスタイルアートなどで、自由な形で絣布の伝統技術を受け継いでいる。

GEOMETRは、チェコ国内の家族経営の機織所と協力し、小規模生産の生地でも自分たちの製品を展開している。デザイナーのふたりはここでもタペストリーと同じ色彩技術の理論を活かしている。テキスタイル作品『コントラスト&コンテクスト』(2017)でチェコ・グランド・デザイン新人賞を獲得、エル・デコ インターナショナル デザイン アワードでも2016年と2018年にインテリアテキスタイル部門で受賞している。

www.geometrtextil.cz

 

  • ブックマーク

この記事を書いた人

チェコセンター東京

チェコセンターは世界22ヶ国24都市においてチェコ文化の普及につとめているチェコ外務省の外郭団体です。2006年10月にアジアで第1号のチェコセンターとして、駐日チェコ共和国大使館内にチェコセンター東京支局がオープンしました。

以来、絵画、写真、ガラス工芸、デザインなどの作品の展示や、映画上映会、文学、音楽、経済などのイベントを開催しチェコ文化を紹介するほか、チェコ語教室も開講しています。また、その他のチェコ文化関連イベントへの助言、協力も行っています。

イベント情報はニュースレターでも配信していますので、チェコ文化にご興味のある方はぜひウェブサイトからご登録ください。お待ちしております!

担当カテゴリ:文化と歴史を学ぶ