ぷらは物語・旅に出よう!~フォークロアを求めて(ブルチュノフ)

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学生に優しいチェコ

突然ですが、チェコは学生にとても優しい国だということをご存知ですか?国立大学などの授業料は、チェコ語で授業を受けると学費が無料で、コンサートや演劇、美術館などの入場料は正規価格の半額ほどになることもあります。そして、私が学生の身で滞在していて最大の恩恵だと感じるのは…… 

 交通費が正規価格の75パーセントオフ!!!※フルタイムで高等教育機関に通っている26歳以下の学生が対象 

 実はこれ、昨年2018年の9月から施行された新しい法律なのです。最初に聞いたときに私は、25パーセントオフの間違いだろうと思ったのですが、本当に75パーセントオフでした!例えば、プラハ~ブルノ間は約200キロ、東京~静岡市間に相当する距離ですが、学生料金で片道1.25ユーロ20197月現在約150円)からバスのチケットが買えます!!!Flixbus利用の場合。)

現在25歳の私は、この割引対象から外れる前に最大限利用せねば!と思い、チェコ国内を旅行するようになりました。普段生活しているプラハはどこをとっても美しい景観や楽しいイベントで溢れていますが、今や世界観光地ランキング上位(トリップアドバイザー2019年発表のランキングでは11位!)に入る国際的な観光地でもあり、さまざまな国の人が集まっていて、もはや国際都市という様相になりつつあります。よりディープなチェコを知るには、プラハ以外の場所にも行ってみると、地域ごとに独自の魅力が見えてきます。 

 王様騎行

チェコは、プラハを含む西部のボヘミア地方と、ブルノ、オロモウツといった都市を含む東部のモラヴィア地方に分かれています。モラヴィア地方はフォークロアの衣装や音楽が今でも根強く残っている地域で、それぞれの地方・村ごとに異なる文化が受け継がれています。毎年5月の下旬にモラヴィア各地で行われる「王様騎行」Jízda králůという行事は、そんなフォークロアを体験するのにうってつけのお祭りです。

この行事は、ミラン・クンデラの小説『冗談』における重要なモチーフの一つでもあり、その最終章では、登場人物たちの語りの重層性と「王様騎行」の掛け声や音楽が、特に印象的に絡み合っています。そんな『冗談』の映画版が実際に撮影されたヴルチュノフVlčnovという街は、王様騎行の会場の中でも最も有名で、200年以上このお祭りの伝統を誇る場所。今回は、筆者が実際にヴルチュノフの「王様騎行」へ行ってきた時の様子をお伝えしたいと思います。(ヴルチュノフの王様騎行の公式ホームページはこちら!https://www.rideofthekings.com/ 

 王様騎行は、その名の通り「王様」と称された少年とその従者たちが民族衣装を着飾って馬に乗って街を練り歩く行事で、その起源は18歳で成年に達したことを示すイニシエーション、春の訪れと豊饒を願う行事、敗走する王様の覆面行列など、諸説ありますが正確なことは分かっていません。

しかしチェコらしいことに(?)、決して神妙な雰囲気ではなく、彼らは行進しながら、ワインを片手に声を張り上げて見物客たちを巻き込んだジョークを叫び続けます。「昨日は居酒屋で朝まで酔っぱらってたよ、誰と飲んでたかって?そこのお前だよ!」「金髪のべっぴんさん、素敵な笑顔できっとおれにプレゼントを用意してるんだろう?」こんな風に指名されると、飲み物やコインなどを青年に差し出すのがお決まりのようです。

そんな愉快な様子を無心で撮影していると、突然青年が私に向かって叫びだします。「まだまだ行列は終わらんが、ついには日本人まで写真を撮りに来たのかい、ええ?!」普通チェコ人はアジア人の顔の区別などつかないはずなのですが、この時日本人と言い当てられたので、びっくりしてしまいました。さらに、実はこれらのジョークは韻を踏んだ言い回しになっており(※例えば最後の例:Ještě nejsme ani na konci a už si mňa fotí Japonci! 「ナコンツィ」と「ヤポンツィ」をかけています 、大半は用意したお決まりの台詞したが、この時ばかりはアドリブで考えたようだったので、他の見物客たちも爆笑していました。もちろん、お約束通り私も身銭を切りました(笑) 

ジョークをふっかける青年
中央の白いバラをくわえた少年が今年の「王様」。両脇の従者は女装し、サーベルをもっています。
「徴収役」と呼ばれる青年たちは、家々を回ってジョークとともに「貧しい王様のために!」と言ってお金や飲み物をもらいます。

村ごとに伝わる伝統

「王様騎行」はヴルチュノフでは三日間にわたって行われ、上記の馬に乗った青年の行列以外にも、村ごとのグループがダンスや音楽をいたるところで披露しています。ヴルチュノフをむスロヴァーツコという地方はこのような伝統が特に強い地域で、民族衣装が豪華であればあるほど、その村の豊かさを示すんだとか。また、子供のころから歌や楽器や踊りをこのような楽団で始めることが多く、老若男女問わず様々な演目で活躍していましたこのような伝統をヴルチュノフでは若い世代も積極的に受け継いでいることがよくわかります。 

こちらはモラヴィアの代表的な楽器、ツィンバロンの楽団。木琴のように鍵盤を撥で叩いて演奏しますが、音色は響きを多く含んでいて柔らかいです。モラヴィアやポーランド、ハンガリーなどこの地域一帯に見られる楽器です。ツィンバロンに加えて、バイオリン、ヴィオラ、クラリネットなどから成る楽団が一日中どこかしらで演奏しています。この地方なら誰しも知っているような民謡などは、見物客と楽団が一緒くたになって歌っていました。 

 お祭りの期間中はマーケットも開かれており、食べ物や飲み物の他、様々な民芸品を買うことができます。 

また、もう一つの目玉が民族衣装の行列。それぞれの村が看板を持って、伝統の民族衣装を纏って練り歩きます。本当に目に鮮やかで、ずっと見ていても飽きません! 

目と耳で楽しんだ後は…

会場のヴルチュノフからバスで30分ほど、プラハへの帰り道にあたるウヘルスケー・フラディスチェという街に宿泊したのですが、奇しくもこの週末は地元のワイナリーの開放日。そう、チェコはビールの生産・消費量の多さで有名ですが、実は温暖な南モラヴィアはワインの名産地でもあり、良質なワインが沢山製造されているんです。地元に住む友人一家の案内で、ワイナリー巡りをしました。ブドウ畑の合間で飲み比べるワインは格別です。お酒の話は長くなるので、またの機会にお話ししたいと思います^^ 

ウヘルスケー・フラディシュチェの本物のワイン樽を座席に改造したレストラン!

ヴルチュノフの「王様騎行」は、チェコのフォークロアを知るにはとってもおすすめの行事。チェコ内外からの観光客やプレスも沢山訪れており、小さな街ですが一日中活気に満ち溢れています。五月の初夏の日差しとそよ風が気持ちいい季節でもありますし、なかなかプラハでは体験できない思い出を作りたい!という方は、ぜひ訪れてみてはいかがでしょうか? 

 ☆ヴルチュノフへの行き方 

プラハからウヘルスケー・フラディシュチェUherské Hradištěまで、バスまたは電車で3時間半~4時間。さらにウヘルスケー・フラディシュチェのバスターミナルからバスに乗り換え、約30分で到着します。チェコ国内の公共交通機関の情報はIDOSというホームページ(https://jizdnirady.idnes.cz/vlakyautobusymhdvse/spojeni/)・アプリで検索できます。また、王様騎行の期間中のバスの増便については、上記の王様騎行の公式ページに情報が掲載されています。 

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この記事を書いた人

豊島美波

豊島美波

豊島美波
1994年神奈川県生まれ。東京大学教養学部地域文化研究科卒、現在人文科学系研究科修士課程所属(現代文芸論研究室)。2018年9月より、チェコ政府奨学金にてカレル大学に留学。14歳の時にドヴォルザークの音楽に感銘を受け、チェコに興味を持ち始める。学部時代はロシア語を専攻し、学部4年生より本格的にチェコ語の勉強を始める。専攻はチェコの20世紀の文学で、現在チェコの学生に交じって修行中です。
minamitoyo0414@gmail.com