Photo: Kamila Reichmannová

日本・チェコ藍染め国際交流を終えて 両国の若い世代が繋ぐ伝統と未来

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チェコの藍染めと日本の藍染め、それぞれの素晴らしい伝統工芸を通じた国際交流。
今年初めにチェコの藍染めを日本で紹介してくださっているViolka(ヴィオルカ)代表の小川里枝さんが、徳島県の高校生を連れてチェコへ研修旅行に行った時の交流について寄稿してくださいました。

藍染めを通した国際交流

2020年1月8日から10日にかけて、阿波藍の伝統を学ぶ徳島県の高校生たちが、チェコ共和国のモラヴィア地方を訪ねました。
一行は、チェコに唯一残るダンジンゲル家とヨフ家の2軒の藍染め工房を訪ね、また現地のストラージュニツェ高校で、ファッション・デザインを専門的に学ぶ同世代の生徒たちと交流しました。この藍染めを通しての国際交流は、日本とチェコの間としては、はじめておこなわれたものです。

Photo: Worick-foto

交流のはじまり

今回チェコを訪れた県立小松島西高等学校生活文化科には、全国的にも珍しい本格的な藍染め工房(藍の館)があります。生徒たちは被服全般のほか、すくもを使った藍建てや絞りなどの染色技法を日々学んでいます。

この交流は、徳島県教育委員会が毎年、県内の高校から特色ある体験活動や研究を募り、採択校には活動助成金が交付される徳島県スーパーオンリーワンハイスクール事業のため、小松島西高が「伝統を守るから超えていく」をコンセプトとした取り組みを計画したことからはじまりました。生徒たちは、畑でタデ藍を栽培し、生葉染めの実験をし、沈殿藍をつくるほか、ファッション造形等の授業で培った縫製技術を使い自由な発想で藍染め作品を制作する課題に取り組み、伝統技法を学ぶと同時に、現代に生かす方法を考えました。その過程でチェコ共和国に藍染めがあり、2018年にユネスコ無形文化遺産に指定されたことを知り、現地の藍染めを知りたいと希望するようになったのです。ヴィオルカは、高校からの要請を受け、徳島でチェコの藍染めについての事前学習会の実施や現地でのプログラムの提案のほか、現地の学校、藍染め工房との交渉・連絡・調整など研修旅行実現全般を支えました。

Photo: Modrtisk Danzinger

 

チェコでの交流

高校からの希望に沿って、研修プログラムには、藍染め工房でチェコの伝統技術を実際に体験すること、現地の職人の話や研究者の講義を聴いて、日本とチェコの藍染めの違いを知ること、自分たちの学んできた阿波藍を使った藍染めの伝統技法をチェコで同じ分野を学ぶ高校生に紹介し、その返答としてチェコの学校での伝統復興の取り組みについて教えてもらおうといったことが盛り込まれました。

Photo: Worick-foto
Photo: Worick-foto

なかでも生徒たちがつくった沈殿藍を使った藍建てのデモンストレーションと絞りと染めのワークショップは、両国の学生が交流する研修旅行のハイライトでした。そして、研修コーディネーターとして一番心配したことが、果たしてチェコでこの藍建てがうまく行くであろうかということでした。藍建てはとてもデリケートな作業です。旅行を企画し、引率した青木真理教諭とこの研修が行われたヨフ工房の5代目の職人、ガブリエラ・バルトシュコヴァーさんとを結び、日本から持ち込めない藍建てに必要な用具や材料等を準備してもらうほか、手順の確認を繰り返しました。その綿密な準備が功を奏し、本番では、とてもよく藍が建ちました。小松島西高校の生徒たちは、現地の高校生に絞りのやり方、染液につけて空気にさらすという作業を手取り足取り教えました。ものづくりに取り組む者同士がお互いに本当に打ち解け、工房の中には心地よい空気が溢れていました。私はその空気を感じてこの交流は大成功だなと思いました。また小松島の生徒たちが染液に手を入れながら「藍が元気だね」と藍のご機嫌を見ているところを見て、彼女たちは藍染めに本当に親しんでいるのだなと感じたものです。このように準備を重ねたひとつひとつのプログラムが、チェコの関係者のみなさん、学校の先生方、生徒たち、そして工房の人たちの心を大きく動かしたと思います。

Photo: Worick-foto
Photo: Worick-foto

古い伝統はそのままにしておくだけでは衰退してしまいます。正しく技術を伝え、時代にあった方法でそれら守り、そして発展させてゆくという取り組みは、特に現代においては必要不可欠なことです。両国の歴史や土地柄に合わせて発展した異なる技法を若い世代が実際に手を動かしながら体験したこと、また遠く離れた、歴史や文化背景が全く違う国であっても、同じように古い技術を現代に生かす努力が行われていることを実際に知ったことは、とても貴重な体験になったことでしょう。ですから生徒たちには、その経験を後輩や地域の人たちにどんどん伝えて行って欲しいと思います。藍の本場である徳島の高校で彼女たちの経験や知識が共有され、これからの課題解決の中で役立ってくれれば、これほどうれしいことはありません。

Photo: Worick-foto

また訪れた先々では、心からの温かい歓迎をいただきました。感受性の豊かな世代の生徒たちには、きっといつまでも忘れられない想い出として残り続けると思います。こういった経験がさらにチェコと日本の間で積み重ねられてゆけば、ふたつの国の間の大きな財産になるでしょう。

帰国後、小松島西高の生徒たちは、この研修の成果をまとめ、2月1日に行われた徳島スーパーオンリーワンハイスクール事業の発表会に臨みました。そこでこの研修内容が高く評価され、見事に最優秀賞を受賞したことは、本当にうれしいことでした。すっかりたのもしくなった彼女たちのさらなる成長と活躍が楽しみです。

また、チェコに長くかかわり、チェコの藍染めを何とか広く知ってもらおうとしている私にとってもうれしいことがありました。今回の事業がチェコ国内のテレビや新聞に取り上げられ、多くのチェコの人が自分たちの藍染めを見直す機会となったでしょう。わざわざ遠く離れた日本から藍染めの勉強をしに来る高校生たちがいるというニュースは、とてもインパクトのあるものだったに違いありません。私にとっては二重のよろこびとなりました。

チェコ国営テレビ文化ニュースでも取り上げられました。
※10:45ごろより紹介されています

https://www.ceskatelevize.cz/ivysilani/1097206490-udalosti-v-kulture/220411000120112?fbclid=IwAR3f0iwFz5gCIWtI2DeR7gbLWO2CDpV5-y3my6StUaiMfVkba_ZL3KeQhQY

今回の研修コーディネートを通し、日本とチェコ、両国の藍染めを取り巻く状況についてより深く知ることができました。また、日本でもヨーロッパの藍染めの技術について、様々な観点からの関心が高いことがわかってきました。ですので、今後はより広い範囲で藍染めについて考え、伝えて行くことができればと思っています。

Photo: 米田真也

小川里枝:おがわりえ
ヴィオルカ主宰。高崎市美術館が姉妹都市プルゼニュ市の協力で開催した「ボヘミアガラスの100年」展を学芸員として担当し、チェコの芸術・文化に出会う。その後4年間滞在したプラハでは、カレル大でチェコ語やチェコ美術を学ぶと同時に、各地の美術・博物館や作家を訪ねる。2014年ヴィオルカを設立し、チェコの伝統的な藍染めに現代日本人の感性を吹き込んだ新しい価値を持つ作品を制作、またチェコの工芸や文化を日本に伝える活動を行っている。美術関係の翻訳にも携わっている。

◇ヴィオルカHP◇
https://www.violka.jp/

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この記事を書いた人

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