チェコの山里に現存するブリキのおもちゃ工場

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子どもから大人までを魅了するチェコのおもちゃ。ぬいぐるみや木製玩具、ブリキのおもちゃなど、種類も様々です。
昨年2018年の5月末から6月末にかけてチェコセンター東京で開催された展覧会「mini wonders ~チェコのおもちゃ 昔と今」にはたくさんの来場者が訪れました。
そこで展示されていたおもちゃメーカーの一つKOVAP(コヴァップ)社のブリキのおもちゃについて、日本で代理店をしているマインドアーチスツインターナショナル株式会社の志村さんに寄稿いただきました。

ブリキのおもちゃの発展と衰退

近年、日本では商業施設や飲食品パッケージなどに見られるように、あらゆるジャンルにレトロなブームが起きました。新年号を迎える現在でも昭和レトロは若者にまで受け入れられているようです。年配層にとって昭和の物事は懐かしいものですが、若者には昭和の物事の記録が斬新に映るようで、昭和生まれの私にはとても微笑ましく感じています。

昭和の子供の遊び道具は、高度経済成長と同時に猛スピードで進化していました。竹とんぼやけん玉、凧揚げなど、身体や自然の力を利用するおもちゃに始まり、テレビが発売された頃には、ゼンマイを巻き上げれば動き出すブリキの自動車やロボットなど、未来の世界を想起させる夢のあるおもちゃが登場しました。その後、プラスチックや乾電池が世に出回ると、おもちゃにも利用され、ブリキのおもちゃは金属製で危険と言われるようになり、1970年代後半には衰退してしまいました。

今日では、おもちゃコレクターの大人たちにとって非常に人気のあるブリキのおもちゃですが、それは昔のような手の込んだブリキのおもちゃを製造できるメーカーが少なくなったことや、製造できても製造コストが高額になってしまうという理由で製造されないことが、昭和の時代に製造されたブリキのおもちゃを探し求める人が後を絶たない主な理由でしょう。

しかし、チェコ共和国には、今日でもブリキのおもちゃの製造を連綿と続けているメーカーが現存しています。首都プラハから車で北へ100kmほど。ボヘミア地方のセミリという町に、半世紀以上も昔の工作機械をメンテナンスしながら今日でもブリキのおもちゃを作り続けているKOVAP(コヴァップ)社があります。

コヴァップの工場の外観
写真提供:マインドアーチスツインターナショナル株式会社

 

昔ながらの製品を作り続ける技術力

1946年に創業したセドラック兄弟玩具製造会社を前身とするコヴァップ社は、50年以上前の共産主義下にあったチェコスロバキア社会主義共和国時代にブリキのおもちゃだけでなく、金属加工品や戦略物資を製造する国営工場として稼働していました。本格的にブリキのおもちゃ専門の製造工場となったのは1991年の東欧革命後からです。

コヴァップの代表作はトラクターです。チェコは国民の主食であるジャガイモや、ビール消費世界一を誇る国として上質なホップの生産が盛んなお国柄で、実際に日本の有名酒造メーカーがチェコのホップを採用していることも近年では有名です。これによりチェコでは1年を通してトラクターの稼働率は高く、牧歌的な田園風景の中を勇壮に移動するその姿は、今日でも子供から大人にまで親しまれ続けています。そのチェコで最も有名なトラクターメーカーがZetor(ゼトル)社です。1946年に創業以来、欧米をはじめ世界80カ国に100万台以上のトラクターを供給した実績のあるゼトル社製トラクターの初号機を、コヴァップは実走するブリキのおもちゃとして約300もの工程を経て、手仕上げで忠実に再現しています。

オフセット印刷により色鮮やかに仕上げられたブリキ板をパンチプレスで型を抜き、型絞や折り曲げたりして立体感を出した後に手作業で組み立てて行きます。その仕上がり具合はおもちゃとは思えないほどリアルです。そして、3段変速とバックのギアーまでも装備され、ステアリングも前輪と連動しています。ゼンマイの巻き上げ位置はボディーにはなく、目立たない右後輪のホイル中央に設けるなど、手の込んだ外観の見栄えからは、昔ながらの製法で製造し続けている意気込みが伝わってきます。

トラクターの心臓部であるゼンマイ部の組立
写真提供:KOVAP社
完成に至る最終組み立て
写真提供:KOVAP社

半世紀以上にわたりチェコの人々に親しまれているコレクション

また、今では大人になったチェコの人たちにとって馴染みのあるおもちゃが現在でも製造されています。たとえば、登山電車やロープウェイなど行楽地にある乗り物のブリキのおもちゃは特に人気があります。他にもゼンマイを巻き上げれば子供が三輪車をこぎながら走り出すおもちゃやテーブルの上で走り回りながらもテーブルの端に行っても落下せずに向きを変えるてんとう虫など、ユニークなおもちゃは、チェコ以外の国でも見直されて数多く輸出されているほどです。このようなゼンマイを巻き上げれば動き出すブリキのおもちゃに馴染みのない現代っ子には、電池を使用していないのに動き出すことが、とても不思議で興味深く、その魅力にしばし見入ってしまうようです。

ケーブルカー
登山電車は、アプト式で線路を登り、峰を通過してから一気に下山し、スイッチバックの後に峰の下のトンネルをくぐって本線に戻ります。1回の巻上げで数往復の運行となります。
写真提供:KOVAP社
ロープウェー
付属の糸を使って走らせることができます 写真提供:KOVAP社
三輪車
前輪をこいで走ります 写真提供:KOVAP社
てんとう虫
テーブルの上でクルクル走ります

さらに、コヴァップは、ドイツのニュルンベルクに存在したCKO社というおもちゃメーカーにおいて1930年代から製造されていたブリキ製のフォルクスワーゲンやメルセデスベンツのミニチュアカーの金型や冶具を1979年に譲り受けています。チェコ共和国のおもちゃメーカーがドイツのおもちゃメーカーの製品を引き継いでいるのは稀なことかもしれませんが、子供たちを笑顔にするおもちゃ作りだけに国境を越えてもメーカー同士の友好的な関係にありました。そのCKO社の廃業後、多くの金型は中国へ渡りましたが、フォルクスワーゲンやメルセデスベンツのミニチュアカーは、今日もコヴァップの工場にてCKOの刻印を施し、当時のモデルをリプロダクションしています。このように、製品を作り続けるには、昔から使い続けている金型や冶具、それらを使うための大きな工作機械を日々メンテナンスしながら使い続けることがブリキのおもちゃを作り続けられる生命線といえるでしょう。また、現在では昔の金型から生成されるワーゲンにゼンマイを仕込んで走行させられるモデルも製造しており、ミニカーコレクター垂涎の製品として高く評価されています。

メルセデス カブリオレ ワーゲン ビートル
ガレージもブリキ製 写真提供:KOVAP社

コヴァップは、今日までに現代的な乗り物や大型特殊車両など数多くの製造を維持し、現在ではお子様が遊べるおもちゃとして危険性を検査するヨーロッパの検査機関をパスした製品も数多く製造しています。

黄色い「安全な玩具」のマークは、ヨーロッパの品質検査機関である

 

 


マインドアーチスツインターナショナル株式会社
Mind Artists International Co.,Ltd.
チェコ共和国を中心に欧州で希少価値のある製品を発掘し、日本市場に流通させている正規輸入商社。
チェコ共和国の製品としては他にもチェコビーズやボヘミアンガラスボタンなども輸入する。

弊社が正規輸入するチェコ共和国製品は小売店へ卸売を行っております。
お近くに販売店が無い場合は、直接にカタログ請求や商品のお問い合わせをいただいております。
〒158-0097東京都世田谷区用賀4-33-21-203
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