出版社の本屋さんを訪れる

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チェコ(プラハ)には出版社が経営する書店がいくつかあります。
多くが小規模ながら、デザインやアートにこだわりのある出版社で、イベントをしたりお客さんと直接話をして自分の出版物を紹介したいという目的で営業しています。

今回はその中でも4店舗をご紹介します。各出版社に5項目のアンケートをお願いしました。

中心からちょっと離れたところを散策しに、日本では手に入らないようなかわいい本やアーティスティックな本を探しに、またはイベントに参加してローカルのアーティストに会ってみませんか?

アンケート内容

1:出版社として書店を持とうと思った理由は?
2:お客さんはどんな方ですか?
3:書店として本を売る以外にどんなことをしていますか?
4:どんなことに特化した出版社ですか?
5:日本のみなさんへひとこと

❶BAOBAB

チェコでは児童書で有名な出版社。毎年”世界の美しい本展”で入選または最優秀を取っている、デザインが良いことでもよく知られています。チェコの絵本のイメージとは少しちがうグラフィカルな本も多く、その美しい印刷にも目を惹かれます。

代表のユライホルヴァースは美術学校で教鞭をとり、出版社のあるターボルでは毎年10月頭に絵本を中心としたTABOOKというブックフェアを開催しています。

書店はヌスレという地域で、昔ながらのプラハの雰囲気が残ると言われています。

1:出版社として書店を持とうと思った理由は?

私たちは小さな書店をターボルという、自分たちの住んでいる街にもっています。書店は、展覧会や作家との出会い、Tabookフェスティバルといった、より文化的な活動をするための場所になっています。それからプラハにお店を持つようになりました。BAOBAB社長であり美術大学の教授であるユライ・ホルヴァースの元生徒がここを今は引き継いでXAOとして運営しています。その後より広い場所を探してたどり着いたのが、現在のオルドジホバー通りにあるお店です。ここは裏に巨大な本の倉庫があり、また本を紹介するための書店を併設しています。観光地の雰囲気とは真逆の、けれど中心地からは遠くない場所にあり、落ち着いて本を探すのにうってつけです。

TABOOK

2:お客さんはどんな方ですか?

お客さんは地元の人が多く、書店を切り盛りするミラはこの辺の人をみんな知っています。彼は本をお勧めもできるし、おいしいコーヒーも淹れることができるんです。

日本の方はというと、どちらかというと現在はXAOのあるクリムスカーの方によく行かれるみたいです。XAOにもBAOBABの本がたくさんありますからね。こちらのオルドジホバーにも日本人のお客さんがいらっしゃってくれたことがあります。この辺りはだんだん人気のエリアになってきていてオシャレなカフェやバーが増えました。

5:日本のみなさんへひとこと

私たちは子供向けのイラストレーションの本、特にチェコのオリジナルと、海外の翻訳本を出版しています。個人的には私たちの書店に来る日本人の方をとっても好きで、皆さんユーモアがあって本のセレクトもフリーだと感じますし、どれだけ私たちの本が好きかを語ってくれるのでとても嬉しいです。

BAOBAB
Oldřichova 2, Praha-Nusle
月曜~木曜 : 13:00-17:00
+420605195614
http://www.baobab-books.net/

❷ XAO

もともとBAOBABの書店があったところを、美術大学の卒業生が引き継ぎ、よりチェコと海外の個人出版に力を入れ、ギャラリーとして経営するのを目的としてリニューアルしました。

個性的なイラストレーションの本や紙ものの作家作品が揃い、いつでも展覧会の作品を見ることができる。アットホームな雰囲気。店主は日本が好きで日本でも展示経験があり、日本の絵本も取り扱っています。

1:出版社として書店を持とうと思った理由は?

絵本と個性的な本を主に扱う小さな出版社として、お客さんと直接話をしたり相談することが大事だと思っています。それは本そのものについて、またはお客さんの意見を聞くこと、さらに私達から本作りに関しての裏側やプロセスをお話しすること。私たちは本をただの商品として売りたいとは思っていません。書店をより人と会うことや経験を共にする場所として機能させたいと考えています。また、そこはみなさんが好きな作家を探したり、チェコの現代のイラストレーターの本を知る場所にもなり得ると信じています。

2:お客さんはどんな方ですか?

地元の人も、観光客も両方です。私たちのお店はVršovice(ヴルショヴィツェ)という地域のKrymská (クリムスカー)通りにあり、この辺りはバーやカフェ、小さなお店やギャラリーがあります。私たちの書店はイラストレーションと絵本を専門に取り扱っています。なので子供連れの若いご夫婦やおじいさんおばあさんがいらっしゃいます。個人出版のコミックやzine、私たちが選んだ海外の良質な本までも取り扱っています。日本の本もありますよ。また地元のアーティストのポストカード、紙のおもちゃや手作りのノートも販売していて、お土産として喜ばれます。日本のお客さんがいらっしゃったこともあります!日本の方が、チェコのイラストレーションに興味を持ってくれるのはとっても嬉しいです。

3:書店として本を売る以外にどんなことをしていますか?

書店の半分をギャラリーとして使用しています。二ヶ月ごとに新しい展示に入れ替えて、チェコや海外のイラストレーターを紹介しています。展示以外にも出版記念イベントや、子供のためのワークショップを開催することもあります。こういったことが作家と読者との交流につながり、XAOのコミュニティづくりとなるのです。

4:どんなことに特化した出版社ですか?

私たちは年に3冊程度しか出版しないのでどの本を出版するか慎重に選びます。XAOは4人のイラストレーターが経営していて、私たち全員が本を、ページをめくることで手渡されるひとつの小さな宝物のように感じています。なので、デザイン、イラストレーション、製本、印刷、素材全てにこだわりを持って製作します。出版補助を受けたり、自費出版だったりしますが、1冊につき200から600部出版します。

5:日本のみなさんへひとこと

日本の皆さん、興味を持ってくれてありがとうございます!皆さまがすぐに普通に旅行できることをお祈り申しあげます。もしイラストレーションや本にご興味がありましたら、BAOBABが主催のTabookフェスティバルをお勧めします。私たちXAOもお手伝いしています。

XAO
火曜~金曜 14:00- 19:00 土曜 11:00-17:00
Krymská 29 Praha 10-Vršovice
http://xaoxax.cz/
xaoinfo@gmail.com

❸ Meander

児童書に力を入れた長く歴史を持つ家族経営の出版社。チェコのアーティスト、ペトルニクルの本を始め、現在は子供のための旧約聖書シリーズに力を入れています。書店はヴィシェフラッドのメインストリートに面していて出来たばかりですが多くのイベントを開催して賑わいを見せています。

1:出版社として書店を持とうと思った理由は?

今年私たちは25周年記念を迎え、300以上のタイトルを出版しました。一般の書店では新しいものにどんどん入れ替わってしまいますが、私たちの出版社の書店では、お客様にeショップと同じだけ種類の本を手にとって見ていただきたいと思っています。

Meanderはチェコや外国のユニークな子供のためのアートブックに特化しています。そのデザインをちゃんと見て欲しいと思い、書店に並ぶような背だけでなくちゃんとカバー全体が見えるように設置するように心がけています。カバーデザインはある意味ひとつのアートなのでギャラリーのように飾りたいと思っています。店内の設計は プラハのCollColl建築事務所で、とっても素敵なのでそちらも注目してみてみてください。書店を持つことはさらに小売に流通代金を取られないというメリットもありますし、やはり素敵なのはお客さんとお話しして本をお勧めすることができます!

2:お客さんはどんな方ですか?

近所に住む人がやはり多いです。近くに小学校があるので、子供連れの親御さんが本を一緒に読みに、または新刊本をチェックしに毎月いらっしゃる方もいます。ファンの方が遠方から特定のものを求めてこられることも。ヴィシェフラドへのメインストリートぞいにあるので、海外からの旅行客、主に韓国、日本、そしてフランスの方も足を止めてくださります。そう言った方には、6ヶ国語に訳されている、チェコの伝説に関する本をお勧めしたりします。また、店内では、いま活躍する作家のポストカードもご購入いただけます。

3:書店として本を売る以外にどんなことをしていますか?

書店は事務所も兼ねているので普通に仕事もしますし、仕事のミーティングにも使うので、取引先の方にも自由に本を見てもらえます。週に1回は子供のためのワークショップや作家による読み聞かせ、サイン会などのイベントを行います。天気が良ければお店の外で飲んだりおしゃべりをしたります。どなた様でも歓迎です!

4:どんなことに特化した出版社ですか?

Meanderは1995に独立出版社としてイヴァナ・ペハーチュコヴァーによって創立されました。私たちは子供と若者のためのオリジナルの作家性の高いアートブックに特化しています。Meanderはチェコの中でもそう言った分野では特に有名な出版社と言えると思います。

5:日本のみなさんへひとこと

日本の皆さんに是非私たちの書店に来て美しいチェコの本を楽しんでほしいと思います。もちろん文化のことやチェコの文学についてもご案内できます。各出版100冊限定のサイン本もご購入いただけますよ。

Meander
Vratislavova 74/7, Praha 2-Vyšehrad
月曜~土曜 10:00-18:00
+420724312300
https://www.meander.cz
marketa@meander.cz

❹ Art Map

本来はプラハ・ブルノ市内ほぼすべてのギャラリーの毎月の展覧会情報を集めた情報誌から始まり、書店を持つようになりました。今回のご紹介の中でも最もアクセスが良く、出版社としてよりも書店としての色合いの方が強いので扱う本もバラエティに富んでいます。作家作品やポスターも販売しています。

1:出版社として書店を持とうと思った理由は?

Artmapを立ち上げた時から、本も本の文化も好きなので書店を持ちたい、さらにArtmapの特徴から、カタログを販売することで展覧会やアーティストのPRにもつながる書店にしようと思いました。

Artmapは今、自身でも出版していて採算が合うかを見ている状態です。自身の出版物を自分の書店で販売するのは、とっても贅沢なことですね。

2:お客さんはどんな方ですか?

書店は国民劇場からすぐの位置にあります。美術学校の学生を始め、日本人の観光客もよく訪れていただいています。チェコのアーティストによるモノグラフや絵本がとても人気です。

3:書店として本を売る以外にどんなことをしていますか?

書店の一角をオフィスにしていて仕事をしたり会議をしたりしますし、建物の入り口のホールをTAPETAギャラリーとして年に4回キュレーターによる発表の場にしています。様々なプログラム、プレゼンテーション、読み聞かせやワークショップを企画していて書店をライブリーな場所にしたいと思っています。

4:どんなことに特化した出版社ですか?

私たちの書店はアートブックに特化しています。選書は慎重に行い、アート、デザイン、建築、絵本、雑誌、チェコの作家によるZINE、さらにOnomatopee, Sternberg Press, Strelka, Valizと言った海外出版の本まで幅広く取り扱っています。出版を始めてからはまだ3年しか経っていないので現在は作家や著者と近い関係性を保ちながら年に2~3冊のペースで発刊しています。本とアート、文学と現代美術の元からある関係性を壊し新しいトピックを提言することを出版のコンセプトとしています。

5:日本のみなさんへひとこと

皆様がいらっしゃるのを楽しみにしています!

ArtMap
Vojtěšská 196/18, Praha1
+420773679612
https://bookstore.artmap.cz
knihkupectvi@artmap.cz

日本ではあまり聞かない、出版社が持つ書店。

チェコには小さな出版社が数多く存在します。各出版社が、作家やアーティストを支援すること、自分たちがどんな本を作りたいか考えること、読み手の人とのコミュニケーションをいかに大事にしているかが伝わってきますね。書店のイベントなどはfacebookで見つけることができます。ぜひのぞいてみてください。

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この記事を書いた人

松本沙希

東京、プラハを拠点に活動するイラストレーター・グラフィックデザイナー。日本で就業後、渡英、のちプラハ工芸美術大学イラストレーショングラフィック科修士課程修了。ポスター、市の発行物や絵本の出版に携わり、IBBY児童書大賞チェコ支部、Brno16国際ショートフィルムコンペの審査員を務めた。2019、2020年度チェコ親善アンバサダー。